わたしの隣人とはだれですか
🌸 第一朗読 (ヨナ1.1~2.1、11)
ヨナの預言
1主の言葉がアミタイの子ヨナに臨んだ。
2「さあ、大いなる都ニネベに行ってこれに呼びかけよ。彼らの悪はわたしの前に届いている。」 3しかしヨナは主から逃れようとして出発し、タルシシュに向かった。ヤッファに下ると、折よくタルシシュ行きの船が見つかったので、船賃を払って乗り込み、人々に紛れ込んで主から逃れようと、タルシシュに向かった。
4主は大風を海に向かって放たれたので、海は大荒れとなり、船は今にも砕けんばかりとなった。 5船乗りたちは恐怖に陥り、それぞれ自分の神に助けを求めて叫びをあげ、積み荷を海に投げ捨て、船を少しでも軽くしようとした。しかし、ヨナは船底に降りて横になり、ぐっすりと寝込んでいた。 6船長はヨナのところに来て言った。
「寝ているとは何事か。さあ、起きてあなたの神を呼べ。神が気づいて助けてくれるかもしれない。」
7さて、人々は互いに言った。
「さあ、くじを引こう。誰のせいで、我々にこの災難がふりかかったのか、はっきりさせよう。」
そこで、くじを引くとヨナに当たった。 8人々は彼に詰め寄って、「さあ、話してくれ。この災難が我々にふりかかったのは、誰のせいか。あなたは何の仕事で行くのか。どこから来たのか。国はどこで、どの民族の出身なのか」と言った。
9ヨナは彼らに言った。
「わたしはヘブライ人だ。海と陸とを創造された天の神、主を畏れる者だ。」
10人々は非常に恐れ、ヨナに言った。
「なんという事をしたのだ。」
人々はヨナが、主の前から逃げて来たことを知った。彼が白状したからである。
11彼らはヨナに言った。
「あなたをどうしたら、海が静まるのだろうか。」
海は荒れる一方だった。 12ヨナは彼らに言った。
「わたしの手足を捕らえて海にほうり込むがよい。そうすれば、海は穏やかになる。わたしのせいで、この大嵐があなたたちを見舞ったことは、わたしが知っている。」
13乗組員は船を漕いで陸に戻そうとしたが、できなかった。海がますます荒れて、襲いかかってきたからである。 14ついに、彼らは主に向かって叫んだ。
「ああ、主よ、この男の命のゆえに、滅ぼさないでください。無実の者を殺したといって責めないでください。主よ、すべてはあなたの御心のままなのですから。」
15彼らがヨナの手足を捕らえて海へほうり込むと、荒れ狂っていた海は静まった。 16人々は大いに主を畏れ、いけにえをささげ、誓いを立てた。
2.1さて、主は巨大な魚に命じて、ヨナを呑み込ませられた。ヨナは三日三晩魚の腹の中にいた。
11主が命じられると、魚はヨナを陸地に吐き出した。
🌸 答唱詩編 詩編30 典65 ①②
神はわたしを救われる。そのいつくしみをたたえよう。
神よ、あなたはわたしを救い、
死の力が勝ち誇るのを許されない。
神よ、あなたは死の国からわたしを引きあげ、
危ういいのちを助けてくださった。
滅びは神の怒りのうちに、
いのちは恵みのうちにある。
夜が嘆きに包まれても、
朝は喜びに明けそめる。
アレルヤ唱 典268 ⑮
アレルヤ、アレルヤ。新しい掟をあなたがたに与える。互いに愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように。アレルヤ、アレルヤ。
🌸 福音朗読 (ルカ10.25-37)
ルカによる福音
25〔そのとき、〕ある律法の専門家が立ち上がり、イエスを試そうとして言った。「先生、何をしたら、永遠の命を受け継ぐことができるでしょうか。」 26イエスが、「律法には何と書いてあるか。あなたはそれをどう読んでいるか」と言われると、 27彼は答えた。「『心を尽くし、精神を尽くし、力を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい、また、隣人を自分のように愛しなさい』とあります。」 28イエスは言われた。「正しい答えだ。それを実行しなさい。そうすれば命が得られる。」 29しかし、彼は自分を正当化しようとして、「では、わたしの隣人とはだれですか」と言った。 30イエスはお答えになった。「ある人がエルサレムからエリコへ下って行く途中、追いはぎに襲われた。追いはぎはその人の服をはぎ取り、殴りつけ、半殺しにしたまま立ち去った。 31ある祭司がたまたまその道を下って来たが、その人を見ると、道の向こう側を通って行った。 32同じように、レビ人もその場所にやって来たが、その人を見ると、道の向こう側を通って行った。 33ところが、旅をしていたあるサマリア人は、そばに来ると、その人を見て憐れに思い、 34近寄って傷に油とぶどう酒を注ぎ、包帯をして、自分のろばに乗せ、宿屋に連れて行って介抱した。 35そして、翌日になると、デナリオン銀貨二枚を取り出し、宿屋の主人に渡して言った。『この人を介抱してください。費用がもっとかかったら、帰りがけに払います。』 36さて、あなたはこの三人の中で、だれが追いはぎに襲われた人の隣人になったと思うか。」 37律法の専門家は言った。「その人を助けた人です。」そこで、イエスは言われた。「行って、あなたも同じようにしなさい。」

🌸 分かち合い
「永遠のいのち」とは何か。どうしたら、それを受け継ぐことができるか。ユダヤ人は、自分たちが誇りにしている律法(掟)を守ることで、永遠の命が得られると考えていた。そして、律法から外れること、律法をないがしろにすることを、何よりも恐れた。ユダヤ人に限らず、人間はどんな社会に属していても、その秩序を守るために掟や規則を設け、それを守ることをよしとし、違反するものに罰を与える。
しかし、イエスは、そうした掟を中心とした世界を超えた世界があること、永遠の命はそうした掟を超えた世界であることを教えようとした。神のいのち、神の世界、神の国はまさにそのような世界。それは、言い替えれば愛の世界。イエスは「わたしは新しい掟を与える」(ヨハネ)と言った。しかし、その掟は、もはや、人を縛り、脅し、処罰する掟ではない。むしろ、人を自由にする掟である。
たとえに登場する祭司やレビ人は、掟を守らない、悪人ではない。むしろ、彼らにとっての、何よりも大事な掟を守るために、傷ついた人(おそらく、血を流していた人)を見過ごすことにしたのかもしれない。イエスは、そのような掟に縛られないサマリア人を登場させることによって、掟を超えた愛の世界があることを教えようとしたのではないか。
人間は、つねに、そうした愛の世界、そこには、少なからず、掟を破るリスクがある世界から、自分を守ってくれる、安心していられる掟の世界に戻ろうとする誘惑を受ける。そんなまやかしの保証から真の自由へと導く恵みを祈ろう。(S.T.)